国立研究開発法人国立国際医療研究センター 疫学予防研究部 Department of Epidemiology and Prevention, NCGM 本文へジャンプ


  研究紹介
■3年間の糖尿病発症を予測するリスクスコアの開発

  職域多施設研究(J-ECOHスタディ)に参加の12社のうち、2008年(または2009年)に健診を受診した8社に勤める30歳以上の糖尿病の既往のない37,416名(男性32,040名、女性5376名;対象者の99.7%は30~65歳)について、ベースライン時の年齢、性、BMI、腹囲、高血圧、喫煙状況(+空腹時血糖、HbA1c)に基づき、その後約3年の追跡期間中に発症する糖尿病を予測するためのリスクスコアを開発しましたので紹介します(PLoS One 2015年)。

非侵襲性のリスク因子を用いたリスクスコアの開発

 解析対象者のうち無作為に選んだ3分の2の集団(24,950名)において、糖尿病のリスク因子である年齢、性、BMI、腹部肥満、喫煙、高血圧、脂質異常症のうち、変数減少法によるロジスティック回帰分析により、脂質異常症以外の項目が糖尿病発症に関連する因子として選択されました。 これらのリスク因子を用いて、ロジスティック回帰分析により得られたβ係数に基づき、リスク因子の各カテゴリに点数を割り当てました(図2)。対象者ごとに各リスク因子における点数を合計し、この合計スコアの3年後の糖尿病発症予測能を評価するためROC分析を行いました(図1)。 得られたROC曲線下面積は、先行研究と同程度であり、本研究で開発したリスクスコアの糖尿病発症予測能は比較的良好であると言えます。また、リスクスコアの妥当性を検証するため、解析対象者の残りの集団(12,466名)において、同様にスコアを算出しROC分析を行ったところ、開発コホートと同程度のROC曲線化面積(図1)、感度、特異度が得られました(感度、特異度については論文を参照ください)。

非侵襲性モデルに空腹時血糖とHbA1cを加えると予測能は高まる

 非侵襲性のリスク因子に空腹時血糖およびHbA1cを加えて、上記の方法でリスクスコアを開発したところ(図3)、ROC曲線下面積は非侵襲性のリスクスコアに比べ大きくなり(図1)、糖尿病発症の予測能が高まりました。

本研究で開発したリスクスコアは、健診で得られたデータで3年後の糖尿病発症を容易に予測できることから、糖尿病発症のリスクの高い人を同定し介入を行うことで、糖尿病発症の予防に役立てることができると考えられます。


*非侵襲性および空腹時血糖・HbA1cを追加したリスクスコア作成時の各リスク因子のカテゴリ分けは同じです。上の図で、割り当てられた点数が同じカテゴリはまとめて示しています。
*本解析対象者の年齢は30~83歳ですが、対象者の99.7%は30~65歳です。


【Part 1】
お酒ですぐに顔が赤くなる体質と糖尿病
 

【Part 2】
脂質の種類と糖尿病
 

【Part 3】
動脈硬化性疾患リスク因子集積と身体指標
 

【Part 4】
残業時間と高血圧、糖尿病との関係
 

【Part 5】
職域大規模集団における糖尿病・前糖尿病の有病率
 

【Part 6】
抑うつ症状とミネラル摂取との関係
 

【Part 7】
縮小ランク回帰による食事パターンと抑うつ症状の関連
 

【Part 8】
3年間の糖尿病発症を予測するリスクスコアの開発
 

【Part 9】
食物繊維摂取と抑うつ症状の関連
 

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